用語の再定義は混乱の元

フラッシュサイト「接着剤.sub」の無精髭さんの日記でフラッシュでの3D表現についてのエントリがあったわけですが、そこで「擬似3D」という用語について一悶着あった様子です。

3Dと擬似3D
http://blog.livedoor.jp/ohige/archives/5252459.html

無精髭さんが線と領域で構成されてる絵を使った擬似3Dなんですという具合に書いたところ、七誌氏が「そういうのは擬似3Dとは言わないんじゃないの」という旨指摘したら、「いや、擬似3Dで良い」という風に他の人から総攻撃を受けている、という感じです。

うーん。私も「擬似3D」と呼ぶのは不適切な気がするのですが……。

かつて擬似3Dという用語は、「スペースハリアー」とかで使われていたスプライトの拡大縮小や、あるいは「F1レース」などで使われていたラスタースクロールとかの、「3Dっぽく見せる」というだけの技術を指してたんですよね。だからレンダリング結果を後処理したものも擬似3Dと呼ぶのはどうかなーという気がします。

既に定義されている言葉を独自の意味で使ってしまうといろいろ問題があるようです。例えばPC初心者の人は「ハードディスク」のことを「ハード」と呼ぶ傾向がありますが、一般には「ハード」は「ハードウェア」の略です。「フロッピーディスク」は「フロッピー」と略すんだから、「ハードディスク」を「ハード」と略してもよさそうなもんですが、既に「ハード」という言葉が別の意味になってるので不適切なわけです。

まあ、今さらラスタースクロールが云々といって通じる時代じゃないですから、「擬似3D」の意味を置き換えてしまってもいいのかなぁ。少し寂しいですけども。

補足(ややこしい話)

無精髭さんは算出された点列をどう補間するかを問題にしているようです。3次元座標上で補間しているのではなく、2次元座標上で補間しているから擬似3Dだ、という。

そうするとグローシェーディングされたポリゴンデータとかも、擬似3Dになっちゃうわけです(一般にはあれは2次元座標上での線形補間ですから)。でも、それが擬似3Dと呼ばれたことはなかったはずです。

それに、補間を全く許さないとしたら、参照先の右の画像もアンチエイリアシングされているわけですから、擬似3Dと呼ぶべきだということになってしまいます(アンチエイリアシングも一般にはレンダリング後に施されるものですから、この画像のエッジも厳密には3Dモデルから算出されたものではありません)。

もちろん、座標変換の結果を後処理したものはすべて厳密には3Dモデルとは言えないかも知れません。でも、それを「擬似3D」と呼ぶのはやっぱり不適切な気がします。その言葉には既に別の意味が割り当てられて長いこと使われてきてしまったからです。