「暗黙の結託関係」としたたかなテレ東
先日の「はてなユーザの困惑 キャプサイトの混乱」はいろんな方に取り上げて頂きました。ありがたいことです。その中でも、特に注目すべきなのがid:yms-zunさんの以下の言説。
といふか、"暗黙の結託関係"といふのはいくらなんでもキャプサイト側に都合の良過ぎる物言ひである。
私のあの記事を読んだら当然出てくるべき意見です。
ここで、原えりすんの電気オタク商品研究所の2004年07月21日の記事が取り上げられていまして、そこに
キャプチャサイトによる有る程度の広告効果とか批評であるという点を
考えても、放置しているデメリットの方が大きいという話なんですよ。
とありました。
この記事はなんだか全体の論旨が通りにくく、「放置しているデメリット」が具体的に何を示しているのかが不明瞭なのですが、もしかしたらこれこそが私が前の記事にちょっと書いた「大人の事情」に依るものなのではないかと思いました。
前の記事に書いたように、アニメは「映画の著作物」と見なされますので権利関係が若干複雑になります。経済産業省のページにある契約モデル案の考え方 ・ 著作権法上、「映画の著作物」(GoogleのHTMLバージョン)に、その具体的な契約モデルが書いてあります。
ここで注目したいのは、放送権を持つテレビ局と著作権を持つ制作会社との間で、互いに作品についての権利保全をするという契約が結ばれる点です(第19条)。
普通の著作権者は自分の著作権侵害を知ったとき、別にそれを放置しても全く問題ないのですが、アニメ作品の場合には権利保全をする義務が生じるようです。
アニメキャプサイトを放置することによるデメリットはここにありそうです。もちろん、権利の侵害があることを知らなければそれで済むのですが、知ってしまった場合は直ちに善後策を協議し、適切な措置を講ずる
必要があるわけでして。
もし権利保全の義務が生じないのであれば、一応「宣伝にもなる」と思えば放っておけるのですが、義務が生じることを考えるとリスクが大きすぎです。
とはいえ、キャプサイトを一つ一つ潰していくのは労力もかかりますし、ネットでの評判を落とす可能性も考えてもあまり得策とはいえません。
――が。
契約には侵害され又は侵害される恐れがあることを知った場合は
とあります。つまり、よほど目に余る事例を除けば「知りませんでした」で通すのが得策のように思われます。つまり基本的に見て見ぬふりをしておけば面倒がなくて良さそうです。
それにもかかわらず、上記の記事にあるように、キャプサイトのほうから
ウチはキャプチャをやっているがそれに文句があるなら法的な根拠を
示せ。それがないのなら認めたと認識する。
――なんてメールが来たりすると、言いたくもなりませんか? 「空気読めよ」と。
程度や規模に関係なく片っ端から「通報」する内容のメールが来たりするのも同様で、テレビ局や制作会社からするとあまり歓迎できる事態ではなさそうです。
一応こないだの記事でも、そういう「大人の事情」から、キャプサイト管理人と(一部の)著作権者の利害が「結果的に」一致している状況を指して「暗黙の結託関係」と書いたのでした。言い訳がましいですけど。
さて、ここで
- 権利侵害を知ってしまった場合にテレビ局や制作会社は権利保全の義務を負っている
- 一応「知りませんでした」は通用すると思われる
という2点を念頭に置いて、テレビ局や制作会社に問い合わせした結果がまとめられているキャプについて考えてみるサイトを読むとそれぞれの意図が見えて面白いです。
特にテレビ東京の対応がナイスです。
無:アニメの画像(静止画含む)をサイトで公開するのは違反ですか?
担:そういう行為が行われているのですか?
いやあ、お見事ですねぇ。