新春オールスターかくし芸映画「オーシャンズ12」

豪華キャストを取りそろえていながら、Yahoo!ムービーのユーザーレビューでは「つまらん」「最悪」「悲惨」「金返せ」だのとさんざんな評価を得ている「オーシャンズ12」を観てきてしまいました。

相当つまらないだろうと身構えてみたせいか思ったよりずっと面白かったです。ていうか、口を極めて罵るほどひどい映画ではありませんでした。

これはあれですね。新春オールスターかくし芸大会の中でやってるドラマと同じノリですね。キャストは無駄に豪華だけど内容は軽め、という。そういうつもりで観ると安っぽいギャグやご都合主義もむしろ楽しくなってきます。

なお、ストーリーが良くないという意見が多々ありましたが、確かに焦点が絞れてないです。

この映画は2001年の「オーシャンズ11」の続編で、Yahoo!ムービーによるあらすじは以下のような感じなんですが、

ストーリー: 3年前カジノから大金をまんまとせしめたオーシャン(ジョージ・クルーニー)とその仲間たちだったが、金を奪われたベネディクト(アンディ・ガルシア)の怒りはおさまっていなかった。「1億6,000万ドルに利子をつけて返済しなければ命はない」と迫り、オーシャンたちは金を準備するためにヨーロッパへ飛ぶ。

こういう紹介をしている時点で何もかも間違っています。この映画は金を用意するのがメインのストーリーではありません。

書き直すならこんな感じです。

ストーリー: 3年前カジノから大金をまんまとせしめたオーシャンとその仲間たちだったが、金を奪われたベネディクトに居所を知られ命を狙われる羽目になる。ただし、2週間の猶予付きで。ベネディクトの真意は何か? そして何故居所を知られたのか? まさか密告者か、あるいは……?

──というわけで、実はベネディクトをけしかけた黒幕がいるんですね。で、実はそいつとの対決がこの映画のメインです。

ベネディクトはオーシャンズが再び集まる理由付けをしているだけで、はっきり言って出てこなくても全然構わない感じです。それをなんか続編の定番っぽく「ベネディクト・リターンズ!」みたいな感じにしてしまっているので焦点がぼけてしまっています。非常にもったいない話です。

あと、伏線がなく展開が強引すぎるという意見も多くありました。確かに強引な展開なんですが、一応それを匂わせる台詞が事前に出てきます(ジュリア・ロバーツのアレについては2回も「似てる」と言わせてましたし)。むしろ律儀にそういう台詞がちりばめてあって、しかもそのシーンはちょっと違和感があるので余計に印象に残るという結果オーライなことになっています。まあ、それをさっ引いても強引さは十分に残るのですが、怒るほどでもないかと思います。

ラストも、カメラワークに気をつけてればそんなに意外なオチではありません。終盤に近づくほど露骨になっていきますし。

それにしても辻褄が合わない部分は残るわけですが、一応やりたいことは明確なんですよね。「これがやりたい」というのがまずあって、そのために多少つじつまが合わないのは目をつぶったというスタンスなのでしょう、おそらく。

もし「やりたいこと」を残したままで全体のつじつまをうまく合わせてあったら「名作」に化けたかも知れません。

それでも所詮は新春オールスターかくし芸大会のドラマレベルなわけですけども。私はそういうドラマでの肩の力が抜けた感じの演技や脚本もそれはそれとして好きなので楽しめましたが、そうでもないと観ててつらいかも知れません。

まあ「映画館で観るほどか」と訊かれると「そうでもない」と言わざるを得ませんが。