JASRAC管理楽曲で動画を伴う配信がNGなのはしょうがない?

極めて高い再現度のために、なんと原作者にまですげぇー。ほんものみたいだ。と言わしめた「あずまんが大王OP再現フラッシュ」が、JASRACからのラブレターにより公開停止に。

 以前から小耳には挟んでいましたが、Flashに収録した曲は利用許諾の手続きすら出来ないと言うシステムには驚きました。その理由が「手続きの形態が整っていない」と言うのですからどうにもなりません。非商用利用に限り、月額数百円単位で利用許諾を取れるシステムを早く整えた方が、結果的にみんなが幸せになれるのではないかと愚考する次第です。

と、作者さんは苦言を呈しています。

もっとも、動画を伴う配信がNGなのは実務上で仕方がない部分もあったりします。なぜなら、動画を伴う場合は「どういう使い方されるか」が特に問題になることが多いからです。

ちょっと脱線しますが、先日、韓国のウェブサイト「サイバー独島」がVIPPERと思われる人物に改竄されたという話がありました。

このサイトによるとBGMが「ハッピー☆マテリアル」になってたんだそうで(どうでもいいですが「あ〜〜あ〜〜あ〜〜あ〜〜♪」で始まるということは6月度でしょうか)。

私はこの話聞いて大爆笑した口なんですけど、曲の作者にとっては「荒らしに使ってほしくはないなあ」というのがほんとのところではないでしょうか。

作者にとって、曲の演奏自体が目的(演奏会や配信など)じゃないときは「何に使われるか」に応じて許可したりしなかったりしたいというのは極めて自然な話です。そんでもって、フラッシュに限らずほとんどの動画には特定の主義主張を含む場合が少なくないので、特に「用途」が問題になることが多いのです。

ぶっちゃけJASRACとしてはそういうのをいちいち審査していられないんですね。そもそもJASRACが「これはいい、あれはダメ」とか勝手に決めるわけにいきませんし。

もしJASRACが楽曲についての全ての権利を持っているのなら、作者の意向を無視すれば(道義的にはどうあれ)済む話なのですが、原著作権者には著作者人格権が残っているために、この点については如何に日頃からアレなJASRACと言えどもどうにもなりません。

そんなわけで、今後も合法的にJASRAC管理楽曲を使ったフラッシュを公開することについては絶望的なのでした。

ところで、動画を伴う配信について制度が整ってないことはずいぶん前から指摘されてたはずなんですよね。

一番有名な例は原作者によるアニメ版「朝霧の巫女」のオープニングアニメです。

2004年3月の話です。アニメの「あまりにも」な出来に業を煮やした原作者が、DVD全巻購入者特典としてオープニングアニメを自ら作成し、さらにそれをネットで配信しようとしたんですね。ところがオープニングテーマはJASRAC管理楽曲なので「動画を伴う配信」はNGです。原作者ならどうとでもなりそうなもんですがどうにもならなかったようです。

そんなわけで、このオープニングアニメは今でも音楽なしで配布されています。

あのときとまったく、全然、ちっとも、変わってないのがJASRACの実体です。

Flashとかのツールのおかげで誰でも簡単にムービーが作れるようになって久しいですが、そうなればBGMにJASRAC管理楽曲を使いたいという要望が出るのは当たり前です。

そのための制度の構築が難しいのは分かりますが、不可能な話ではありません。要望があるのにいつまで経っても制度が整わないのは、結局JASRACにはそれが出来るだけの組織としての力がないってことを露呈しているわけです。

そんな団体に音楽の管理を任せておいていいんですかねぇ。こんなんじゃ「いや、つまりはもう音楽を聴いてほしくないってことなんじゃない?」と揶揄されるのも仕方ないですね。

きっと他の管理事業者の方が柔軟に対応してくれますよ。アーティストの皆さん、もうJASRACに委託するのやめちゃいませんか?

──というのが今日の結論なのでした。

(なお、この話には「楽曲の使われかた」について原著作権者がどこまで権利を持つことができるのかという問題がありますが、それはまた別の話ということで)