博士がその数式を愛した理由 解

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式』が映画化されて今月21日からロードショーが始まるそうですね。機会があったので原作を読んでみました。

確かにおもしろいです。これ。

ていうか私「記憶もの」に弱いんですよね、そんなジャンルあるか知りませんけど。

「記憶もの」のうち代表的なのは『アルジャーノンに花束を』とか、そういうやつです。最近話題になった同人誌・ドラえもん最終話オリジナルを転載しているページ)も、私の中では「記憶もの」です。

「記憶もの」であるということ以外でも、何気ない数字に意味づけがされることで世界が彩られるというあたりも好みです。ところでこの小説に出てくるNを、Numberと解釈すると別の読み方ができますねぇ。

──と、それはともかく。

この物語でキーになるのが、オイラーの等式と呼ばれる数式です。小説ではこんな形で登場します。

eπi+1=0

これがおそらく「博士の愛した数式」なのだと思われるのですが、登場の仕方が唐突な上にその理由が語られないので、人によっては消化不良になったりします。

人力検索はてなでもこんな質問がされてたりしました。

この質問、小説を読んだ人には分かるけど、読んでない人には質問者が何を知りたいのか全くわからんというサジ加減が実に粋だと思うんですが、分からない人が掲示板で「質問の意味が分からん」みたいなことを書いたら、「分からないなら答えるな」「訳の分からん質問は規約違反だ」「いや、分からないなんてことはない」などと大げんかになって50近くレスがついてたりするあたりが笑えます(笑っちゃいけないか)。

ちなみに質問の回答としては「その数式が美しいから」というのが多勢を占めるのですが、掲示板のほうでこんな説が紹介されていました。

「いーっぱいのあいじょう」の駄洒落じゃないのか?

eπのi乗! 「の」の位置が気になりますが、この説、かなり有力な気がします。だって、普通はπiと書かずにiπと書きますもん。わざわざひっくり返してるあたりに作為的なものを感じます。

まあ、「博士がその数式を愛した理由」は「美しいから」だとしても、じゃあ「なぜあの場面で登場するのか」という謎は残ります。

これは作者が「説明するのは野暮だ」という考えなのでしょう。おそらく、主人公が博士に聞けば博士は何度でも答えてくれるんでしょうが、作者は結局それをさせないんですよね。でも、登場人物の一人がそれを知っているということは主人公に気づかせていて、それで十分でしょう──という話なんだと思います。

でも、映画の公式サイトのストーリー紹介によると、そのへんの唐突さは伏線を張ることでフォローされる様子です。うーん。改悪にならなきゃいいですけど。

まあ、映画としてはそのくらいわかりやすい方がちょうどいいのかも知れません。