『とらぶるうぃんどうず』の著作権???
RinRin 王国経由で知ったのですが、凝ったギミックで大人気の『とらぶるうぃんどうず』のフラッシュがあまりに広がりすぎて一部でとまどいが生じているようです。
『とらぶるうぃんどうず』は元々は「ふたば★ちゃんねる」という、割と限られた人たちが利用しているところの画像掲示板が発祥なんですが、フラッシュの効果で「空気の読めない」人たちが流入してしまったらしく、元からの利用者(2ch の「名無しさん」的意味合いで「としあき」と呼ばれる)の一部の人たちが反発している様子です。
以下の記事に詳細があります。
で、私が気になったのは、二つ目の記事の以下の記述。
今回は「OS娘」と言う形で、MS社のWinOSをモチーフにしたキャラクターが問題になったわけだが、果たしてこれは「一次創作」なのか、「二次創作」なのか、法的解釈*1をすると、どうなるのであろう。
僕のかじった程度の著作権の知識でいくと、WinOSが元である事は明らかとは言え、擬人化と言う形で絵に起こしたのはとしあき達である。また、Flash の事を言うならば、使用した楽曲にも著作権は存在する筈。しかし、Flashを作ったのはとしあきな訳で、では果たして最終的な著作権の所有者は「誰」になるか、と言うと……(ここで低脳思考回路はショート)。
やはりMS社及び楽曲の作者、と言う事になるのであろうか? 法的知識に富んだ方の解釈を聞きたい所。
私は専門家じゃないですが、JASRAC からラブレターが来たときにちょっと調べたのでそれに基づいて知ってる限りで書きます。
フラッシュ『とらぶるうぃんどうず』の構成要素は以下のように分けられると思います。
●Windows の名称やロゴ ┃ ┃ ●「OS を擬人化する」というアイディア ┗┳┛ ●me たん達の絵 ┣━┓ ┃ ●『とらぶるうぃんどうず』の設定 ┃ ┃ ┃ ┃ ●使用曲『さくらんぼキッス 〜爆発だも〜ん〜』 ┃ ┃ ┣━┓ ┃ ┃ ┃ ●替え歌 ┃ ┃ ┃ ┃ ┗━┻┳┻━┛ ┃ ●フラッシュ『とらぶるうぃんどうず』
以下、それぞれの要素の権利について検討します。
- Windows の名称やロゴ
Microsoft が商標権を持つはずです。
ソフトウェアとしての Windows は著作権で守られます。が、me たんの絵には名称やロゴしか使われていない点に注意です。名称やロゴは著作権ではなく商標権で守られます。
- 「OS を擬人化する」というアイディア
誰のものでもありません。
アイディアは著作権法の管轄外ですし、著作権法以外にも「アイディア権」みたいなものを認める法律はないはずです。いわゆる「無機物の萌え擬人化」はビスケたんで一気に広まった気がしますが、仮に「OS の萌え擬人化」に限ったとしてもビスケたんよりも遙か以前に娘化という文化はありますし。
- me たん達の絵
最初にキャラデザインして絵を公開した人が一次著作権者です。
前述したとおり、名称やロゴは商標権ですので、me たん他の絵についてマイクロソフトに著作権は一切ありません。ただし、商標権関係でマイクロソフトに訴えられる可能性はなきにしもあらず。
最初に描いた人以外の人が描いた絵は二次創作物(複製物)と見なされると思われます。その場合、やはり最初に描いた人が著作権者になり、あとでそれを元に描いた人は著作権は主張できません。
- 『とらぶるうぃんどうず』の設定
設定だけならば著作権者は存在しません。
設定も、それだけならアイディア扱いです。ただし、その設定を利用したマンガなどが存在するならば、そのマンガの作者が著作権者になります。ただしそのマンガも絵の場合と同様に Microsoft が持つ商標権の侵害になる可能性があります。
- 使用曲『さくらんぼキッス 〜爆発だも〜ん〜』
作詞者、作曲者、歌手に著作権があります。
JASRAC のサイトによると、使用曲の著作権管理は JASRAC には委託されていないようですので、少なくとも JASRAC から何か言ってくることはありません。仮に JASRAC が著作権管理をしていた場合、動画に伴う配信は認められませんので、合法的な配信(使用料を払って配信する)すらできません(これは JASRAC による管理の歪みの顕れなのですが、今回は関係なかったりします)。
- 替え歌
替え歌を作った人による2次創作物(翻案物)……ということになるかと思います。
基本的に、著作物を「ちょっと変えただけのもの」には著作権は認められず、翻案物となります。この場合、原著作権者の許諾がない場合は同一性保持権の侵害になります。
- フラッシュ
フラッシュの作者が一次著作権者になります。
フラッシュの構成を考えたのはフラッシュの作者であり、他の誰かではありません。「フラッシュそのもの」の元になる著作物が存在しないので一次著作物と見なされると思われます。
ただし、以下の権利を侵害している可能性があります。
以上は「事実」です。(もちろん私の誤解に基づく記述はあるでしょうから、その訂正などは必要かも知れませんが、それは指摘があれば謝罪の上で訂正します)
さて、以上をふまえた上で以下に私の考えを書きます。えーと、厨房とか DQN とか言われるの覚悟で言い放ちます。
「権利者にとって不利益のない限り、権利者に甘えていいじゃん」
私のようなパロディばっかりやってる人間にとっては著作権者は神様です。実は私のサイトのコンテンツは著作権(とくに著作者人格権)の侵害をしまくってるわけで、そういう意味では天に唾する行為なんですけども、そこはそれ、著作権者の方々の寛大さに甘えさえていただいているわけでして。
フラッシュが諸権利を侵害しているのは事実です。でも、それは(一応今のところは)原著作権者の寛大さが故に問題になっていません(違法性がないという主張ではありません)。このまま素直に甘えさせてもらってればいいと思います。
ただ、散々他の著作権者の寛大さに甘えさせてもらっていながら、いざ自分の著作物がそういう扱いを受けると文句を言うなんてパターンがもしあるのなら、それはずいぶんケツの穴の小さい話だな、という印象はぬぐえません。
追記:参考サイトを2つほど挙げます。
- 商標(トレードマーク)
データディレクトテクノロジーズ株式会社の商標の使い方について。一般論ではないですが、参考にはなります。
- 二次創作物とは何か
ファン活動考 〜ハリポタ著作権問題について〜より。二次著作物と二次創作物の違いがよく分かります。