技術的なアクセス制限についてなんて触れてない
今日は予告通りにLinks and Law: Myths(以下 LinkMyths)についてです。
原文の英語をそのまま読むのはちょっときついので、今日はししゃものエースさんによる訳文を参照ながら書きます。この文書は LinkMyths に対し論理が飛躍あるいは自己撞着している箇所もある
という具合に批判的なのですが、訳文は中立的です。むしろ Tim 氏の言いたいことをなるべく汲み取ろうとしている点で好意的とも言えます。
なお、ししゃものエースさんは上記のような理由(この文書は非論理的)から、
『リンクは原則として自由である』と言う事を主張する人間は、この文書を参照すべきではないし、する必要はない。
としています。その件について私もほぼ同意見です。で、実はもなみさんも結局はLinks and Law: Mythsは破綻している
ということを言いたいわけですから、あまり議論する意味がないように思えます。ただ、あまりにも解釈の違いがもなみさんと私とで著しいのでコメントしていきたいと思います。
もなみさんは、LinkMyths に書かれていることに従うならデリられないようにアクセス制限することも許さないって主張しなければならない
と書いていまして、その根拠として Tim 氏が
TicketmasterがSeattle SidewalkというWebPageへのアクセスを制限しようとした事に対してキチガイだ(crazy)とまで言ってますし、別の事例としてネット上の新聞社の記事に検索サイトがリンクすることを禁じた裁判について糾弾してる
ということを挙げています。
まず、この引用元なんですが、Hall of Flame
という題名がついているんですね。ししゃものエースさんはここを訳しあぐねていて、とりあえず議論の殿堂
と訳していますが、いわゆる「煽り」を flame message と呼ぶことから、「煽りの場」という風に意訳した方が良さそうです。なお、ニューズ・グループに alt.flame.hall-of-flame っていう言いたい放題のグループがあるらしい(Ref. Netiquette by Virginia Shea - alt.flame.hall-of-flame)ので、この解釈はほぼ間違いないでしょう。
つまりこの部分は、あんまりまともな議論の根拠にできない LinkMyths という文書の中でも、特にあてにならない部分というわけなんですが、それを言ってしまっては詮無いので、一応まともに受け止めてみることにします。
まず、Ticketmasterが云々の部分ですが、この事件がどういうものだったか分からないと何とも言えないなと思って調べました。そしたら、Web ってのはすばらしいですね、その件に触れていてしかも日本語のドキュメントがちゃんとありました。
http://internet.impress.co.jp/usa/199707/199707_7.pdf
これによると、チケットマスターに訴えられたサイドウォークというのは、マイクロソフトが開設したシティガイドサイトだったそうです。で、
チケットマスターはほかの大手シティーガイドサイトと文書による契約を行っており、マイクロソフトとも交渉を進めていた。しかし交渉が決裂したにもかかわらずマイクロソフトがリンクを張り続けているため、「チケットマスターの商標を無断で利用している」などの理由で訴えた。
ということなんですが、この部分からは、例えばチケットマスター側が Referer を見てマイクロソフトからのアクセスをはじくとかの措置を施したかどうかまでは読みとれません。どっちかというと「無断リンクするな!」とクレームつけただけみたいに読めます。
で、この件について確かに Tim 氏は気が触れているとしか思えない
」と述べているのですが、一応これには続きがあって、
なぜなら、シアトルサイドウォークがチケットマスターのサイトに客を、つまり利益を運んでくれているのに、わざわざそれを拒絶する事になるからである
としているんですね。
で、問題になるのは Tim 氏がデリられないようにアクセス制限することも許さない
とまで言っているか、です。上記文脈では、「(本人に利益があるのに制限しようとするのは)気違い沙汰だ」と言ってるわけで、デリられるとかの明らかな不利益を防ぐためのアクセス制限についてまで否定しているとは言えないと思います。
で、もう一つの件についても同様です。
こっちはデンマークの事件だとのことで、この話の詳細について書かれた文書を見つけられませんでした。なので、具体的なリンクによる影響のうち何が違法だと判断されたのか分かりません。
- 追記:[2004/05/25]
-
もなみさんのコメントのとおりにしたら、ありました。
ディープリンク禁止命令の影響どこまで?
うーん。なんで気づかなかったのかなー。
Tim 氏はこの事件についてもしこのような判決が受け入れられたら、Webの機能は完全にマヒしてしまうだろう
とコメントしているのですが、結局 Tim 氏が具体的にどんなアクセス制限についてご立腹なのかも分かりません。
- 追記:[2004/05/25]
- 上の追記の記事から、ディープリンク禁止にご立腹ということが分かります。
もちろん、Tim 氏が「あらゆるアクセス制限は許されない」という考えのもとに上記のような意見を述べている可能性はゼロではありません。あるいはもうちょっと限定した話で、「法によりリンクが制限されるのは許されない」という考えなのかも知れません。一応、文書のタイトルが「リンクと法律:神話」ですし、この文書の中では技術的なアクセス制限については触れられていませんから、こっちの解釈のほうが妥当な気がします。
いずれにせよどっちの解釈が正しいかという話になったら、少なくとも LinkMyths だけを読む限りではどっちとも言えないというのが結論になってしまうのではないでしょうか。
実は私は、もなみさんのもうひとつの指摘(条件つきで個人情報晒しを認めなければならない)の方が重要だと思っています。が、今日は長くなってしまったので明日か明後日に(明日はちょっと忙しくて更新できないかも知れません。なるべく時間を作るつもりですがダメだったらごめんなさい)。