キーワードルール改定に関する意見-2

前回で述べた、

  • 「はてなダイアリーのキーワードは文字列に過ぎない」
  • 「削除されることが予想されるキーワードは登録しない」

の2点に留意しながら、ケーススタディとして評議会で問題になった「暑い」と「喜ん」について考察してみます。

まず「暑い」について。これはあんまり難しい問題ではありません。前回挙げた「削除に回されがちなキーワードが持つ要素」の「一般的過ぎる」に該当します。前回述べたように、一般的すぎるキーワードは情報量が少ないために削除されやすい傾向にあります。

ここで存続派が取った行動は示唆的です。キーワードの解説をひたすら充実させたのです。彼らは解説に「情報」を加えることでキーワードの有用性を高めようとしたのでしょう。

しかし、繰りかえしになりますが、私がここで言っている情報量とは情報理論で定義されている情報量です。一般的な意味の「情報量」は「有用性」と可換かもしれませんが、情報理論での情報量は出現パターンや出現頻度に依ります。

もうちょっと直感的に考えても情報量の概念は分かります。「とある日記に『暑い』というキーワードが含まれている」という事実から、「その日記についてどのような手がかりが得られるか」を考えればよいのです。果たしてその日記は自分が読みたい文章でしょうか? それとも読んでも無駄な文章でしょうか?

大多数の人は「『暑い』が含まれている日記」の有用性を判断できないはずです。有用かも知れないし、そうじゃないかも知れない。そういうとき「『暑い』の情報量は小さい」と言います。

こう考えると、はてなダイアリーにとっての「キーワードの有用性」とは、「そのキーワードを手がかりに日記の有用性が判断できるかどうか」ということだと言えます。残念ながら、「暑い」の解説がいくら充実していても――つまりいくら「キーワードの解説の有用性」が高くても――はてなダイアリーのキーワードとしての有用性は希薄なのです。

次に「喜ん」について。これは複合的な問題なので難しいのですが、まず第一に「一般的過ぎる」ということは言えると思います。なお、品詞に関しての制限はなかったことと、「はてなダイアリーのキーワードは文字列に過ぎない」ことから、「語幹だから」という理由はあまり議論する価値はないと思われます。

ただ、以上に挙げた理由は比較的客観的判断が付きやすいものです。問題は、次に挙げる客観的判断がつけられない要素です。

まず、このキーワードは「ポジティブキーワード」がらみのものです。そして「ポジティブキーワード」は、前回挙げた要素のうちの「思想的色合いが強い」に引っかかります。

ポジティブキーワードのコメント欄何かの宗教なんですか?とありますが、私も同じような印象を受けました。ある価値観を基準に、それ以外のものを排除しようとする姿勢が悪い意味で宗教的です。

さらに「作成者がいわくつき」にも引っかかります。「ポジティブキーワード」の作成者ははてなダイアリーのあちこちでトラブルの中心になっているid:gliff氏です(かつては日記を公開していましたが、今はプライベートモードになっています)。あまりに彼が関係するトラブルが多いために2chで専用ウォッチスレが立っています。何故彼がそれほどまでに注目されるかはここで触れてもしょうがありませんが、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」と言うように、そういう人が作成したキーワードはただそれだけの理由で削除に回されがちです(ちなみに「ポジティブキーワード」は削除予定にはなっていませんが、リンク不要が134に対してリンク可が8と、不人気が如実に現れています)。

これらの要素は客観的判断をつけることが困難ですから、どんなルールを制定してもついて回る問題です。システム的に防ぐのも困難ですし、はてなスタッフによる介入でも解決しません(強制的に片は付くかも知れませんが)。

私の個人的な意見としては、これらのどうしようもない問題を解決しようとするためにルールやシステムが複雑になってしまうのは良くないと思います。

いろいろなルール改定案があり、中には複雑なものもあるようです。積極的に取り入れていくべきアイディアもたくさんあると思います。しかし、本質が「客観的判断がつけられない」という点にあるにも関わらず、別の要素にその理由が見いだされて複雑なルールやシステムが提案されているのだとしたら、それはどうなんだろ、と思うのです。これは一般論で、特に誰かのアイディアについて述べているわけではありませんが。

もうちょっと続く。