[misc] 生命が遺伝子で語る物語
id:hikigaeruさんの言葉とデジタルという記事で紹介されていた生命のプログラミング言語を読んだら、なかなか面白かったです。
かいつまんで言うと、DNAは記号の羅列ではなくて、言語構造を持っているのではないかという話でした。
よくDNAは生命の設計図と例えられますが、設計図というよりは文章になっていると思った方が、イメージとしてはより近いようです。その根拠の一つが、DNAに書かれている情報は言語の文法に似た階層構造を持っているらしいということ。
文法が階層構造を持っているというのはどういうことかというと、例えば
乙女たちが、くぐり抜けていく。
という文章があるとします。この文章を、
マリア様のお庭に集う乙女たちが、くぐり抜けていく。
──という具合に修飾していきます。この段階ではまだ「乙女たち」と「くぐり抜けていく」はくっついています。つまり、関連の深い語句は隣接しています。でも、
マリア様のお庭に集う乙女たちが、背の高い門をくぐり抜けていく。
マリア様のお庭に集う乙女たちが、今日も天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。
──と、ごてごて修飾していくうちに最初はくっついていた「乙女たち」と「くぐり抜けていく」が遠く離れていってしまいます。でも、きちんと言いたいことは伝わります。
遺伝情報も、これと同じように本来くっついているべきものが離れて存在しているのだそうで。もちろんそれはある規則に則っていて、それが自然言語に現れるような文法と同じ構造を持っているらしいのです。
さらに面白いことに、そういう階層構造を持った文法というのは、自然淘汰的に獲得されるらしいのです。つまり、生命の長い間の生き残り競争で勝ち抜いた結果、そういう仕組みになっているかもしれないのです。
今のところこの話は仮説の段階で、DNAと言語が, なぜ似た構造をもったのか,進化とは何なのか
という謎はまだ解かれていないそうです。
でも、私たちが物語を紡ぐように生命は遺伝子を紡いでいると考えると、生命の存在はそれ自体が壮大な物語であり、逆に物語はそれ自体が一つの生命である──なんて考えることもできそうです。