割とあっさりした最終回のポワロとマープル第39回

3クールに渡って放映されてきた名探偵ポワロとマープルもいよいよグランドフィナーレです。

その割にはあっさりしたラストでした。普通に事件が解決して終わり。

さすがのポワロも情が移った──という演出なのか、ポワロがメイベルを気遣っている様子が妙に強調されていたのですが、唐突な感じがありました。あと、音楽だけやたらと気合い入っていて盛り上がっていました。でも、音楽だけ。

そして、次回予告の代わりにかつての各シーンをバックにしたメイベルのモノローグで締めです。んまあ、あんまり大したこと言ってませんでした。

シリーズ全体の懸案事項であったメイベルと父親との確執に終止符が打たれるのかと思いきや、そのへんのフォローは一切無し。どうやらこのあたりのエピソードは「スリーピングマーダー」の最後で一応けりがついたということになってるようです。だとするとこれを最終回に持ってきた方が良かったんじゃないですかねえ……。原作でもミス・マープル最後の事件ということになってますし。いまいち意図が分かりません。

アガサ・クリスティー紀行は「終の住みか 〜ウォリングフォード〜」ということで、アガサが生涯を閉じた住まいをピックアップ。これまでにも何度か出ているアガサの孫が思い出を語ります。そしてラストにアガサの墓碑。これのおかげでやっと「終わった感」が出ていました。

総括など

アガサ・クリスティーのファンなので一生懸命全部見て感想を書いてきましたが、まあアニメの出来としては全体的にそこそこ、といった感じでした。どうしても問われるのがオリジナルキャラのメイベルとオリバーの存在意義。

まあ、折笠富美子の声は良かったですけどね。うん、おかげで華はありました。もうちょっとメイベルに感情移入できれば良かったんですけども。

そういえば何げにミス・レモンがかなり良かったです。原作だとそんなに魅力的じゃないんですが、アニメでは厳しい中にもただ厳しいだけじゃない言葉の響きと、感情がないのではなく良く抑えられているという意味での冷たさにより、実に魅力的な女性としてミス・レモンが作り上げられていました。

これは偏に声優の田中敦子の実力でしょうねえ。冷たさが本当に絶妙だったわけです。これがもしあんまり感情豊かだと原作のイメージぶちこわしであんまり良くなかったでしょうねえ。

是非このキャストで『ヒッコリー・ロードの殺人』を観てみたかったです。この話は珍しくミス・レモンがフィーチャーされる話なのです。狼狽するミス・レモンはこの話でしか見られません。あーもったいない。是非観たかったなー。

ミス・レモンで語りすぎました。

シリーズ中の個人的ベストは『クリスマス・プティングの冒険 前編/後編』です。クリスマスの描写を丁寧にやってたのが高ポイントでした。アガサも前書きでわたし自身の好みを発揮させてもらったものなのですと語っているように、この作品はまさに「そこが大事なんです!(© 森 薫)」という感じですから、そのへんきちんと作ってあったのは実に良かったと思います。ブリジェットも(声が微妙とはいえ)かわいらしかったですし。

というわけで、5/19からNHK教育で再放送があるわけですが、「クリスマスプティングの冒険」以外はチェックする必要はないと思われます。

まあ、松来未祐演じる死んだ孫娘の霊の描写が妙に気合い入ってる「動機と機会」も何げに穴ですが。