「プロは素人の相場観を狂わせてはならない」のほうがより正確かも。

がくっぽいど」のパッケージイラストを三浦建太郎氏が無償で描いたという話について、こういうことがあると他の人が対価を求めづらくなるのではないかという指摘がありました。

このエントリ、私にはそんなにおかしなこと言ってるようには感じられなかったのですが、コメント欄ではフルボッコにされてますねえ。

まあ、「いついかなるときでもプロは対価を求めるべし」みたいに読めてしまう点、少し表現が良くないかも知れません。

それでも私は、この件はちょっと罪深いなあと思ってしまいます。というのは、これによってこの手の仕事の相場観を狂わされてしまう人が少なからずいるだろうからです。

私事になりますが、昔とあるイベントに関わったときに数百枚のチラシを作ったことがありました。そのときに印刷屋さんに口利きをしてもらって、いわゆる「お友達価格」でクオリティの割にえらく安くしてもらったことがありました。

このとき、その口利きをしてくれた人が「本当ならいくらかかるか」を教えてくれました。これが1割2割の話ではなく、なんと「数倍」でした。

少なからずショックを受けた私に、続けてその人はこう言いました。「別に恩に着せようという訳じゃなくて、こういう値段が当たり前だと思ってしまうと、あなたが後で困ったことになる可能性があるので」

私はこのとき「本当の相場」を教えてもらって良かったと思っています。さもなければその後における似たような機会で、プロに対してとんでもなく失礼なことを言いかねなかったからです。

さて、上記のエントリでは次のような指摘がされています。

「あの三浦健太郎先生がタダで描いた」という事実は、VOCALOIDがらみの嫌儲勢力を増長させるおそれがある。あんな超売れっ子漫画家がまったくの善意からタダでやってくれたんだから、当然お前ごときが対価を要求したりしないよな? という醜悪な論理展開がなされるのが目に見えている。

もっとも、プロ同士の仕事でそんなバカバカしいやりとりになることは考えられないでしょう(これに続く「自己批判してみるよ」というエントリでもフォローされています)。プロはプロ同士できちんと「相場観」を共有しているはずだからです。

でも、素人は違います。一般に、素人は適切な相場観を持ちません。

プロが善意で無償か、それに近い仕事をすること自体は問題ないことだと思います。でもそれによって素人の相場観を狂わせてしまうようなことがあったら、それは「罪」ではないでしょうか。

でもまあ、普段はさほど気にすることでもないのかも知れません。でも、特にニコニコ周りにはそういう相場観について無自覚な「素人さん」が多いような気がするんですね(全くの偏見ですが)。となると話がちょっと違ってくるかな、と。

どんな形にするかはともかく、何かしらのフォローがないと悪影響が残ってしまうように思います。