「無断リンク禁止」なんて言ってない
もなみさんの『もなQぽぉたる』でリンクフリーの問題について触れているんですが、解釈がちょっと恣意的な気がします。
まず、
You are responsible for what you say about other people, and their sites, etc., on the web as anywhere
という文を
「リンクした結果によって生じる問題に対する責任を取らなければならない」
すなわち、
リンクしたことによって相手のサイトが重くなったり、迷惑を被ったのであれば、その責任はリンクした側にある
という主張であると解釈していますが、これには無理があるように思います。
もなみさんは上記の文を
「Web上で述べた人々やサイトに対する責任を取らなければならない(もなみ訳)」
と訳していますが、私が直訳風味で訳しますと、
どこでも同じように Web 上において、他の人々やそのサイト等についての発言に責任を負うべきです。
となります。
もなみさんは as anywhere を訳していないのですが、これはニュアンスとしては「他のメディアで発言するときと同じような責任がつきまとうんだよ(Web だからといってどんな発言してもよい訳じゃないよ)」ということでしょう。
つまりこの文は「発言」についての責任について述べているのであって、リンクしたという「行為」につきまとう責任について述べていると解釈するのは拡大解釈のように思われます。
文脈を考えれば、「リンクと法律:迷信」というタイトルの文書の中の、しかも「『リンクは著作権侵害だ』という迷信」についての話で、さらにその中の「他と同じように発言に責任を取れ」という文が、サーバの負担が云々とかいう WWW 特有の技術的なことに言及しているとはちょっと考えにくいのではないでしょうか。
次に RFC1855 の
Don't point to other sites without asking first.
について。
もなみさんはこれを「無断リンク禁止」と解釈していますが、果たしてどうでしょうか。
まず、RFC1855 の冒頭に a minimum set of guidelines
とあります。つまり、「最小限のガイドライン」だということです。これだけ考えても「無断リンク禁止」という主張は最小限と言うにはちょっと過激すぎる気がしますね。
実は例の一文については「ウェブサイト公開に当たっての意見、一問一答形式」に別の解釈が載っています。
確かに RFC1855 の 4.2.1 節に例の一文はあるんですが、4.2 節のタイトルは Administrator Guidelines となっています。つまりこれはサーバの管理者向けのガイドラインなんですね。
この administrator は「ウェブページの管理人」のことではないのか、という意見もあるかと思うんですが、他の節を読むと明らかなとおり、ここでの administrator はサーバの管理者です。
というより、この文書ではサーバの管理者とウェブページの管理者を分けていないんです。これはおそらく、この文書が今ほど「一般の人がウェブページを運営する」ということが一般的でなかった時代の産物だからだと思われます。
つまり、今は「ウェブページの管理者はサーバを利用しているだけでサーバの管理者は別にいる」というパターンがほとんどですが、当時は両者が同一人物か少なくとも同じ組織の人間だったので敢えて分けることはなかったのでしょう。
というわけでこの文書が基本的にはサーバの管理者向けであるということを考慮すると、point to other sites が他サイトへのリンクのことを示しているとは言い切れなくなります。
実はサーバの設定で「自分のサイトのアドレスによって別のサイトを指し示す」なんてことができて、このことも point to other sites と表現できます。こういう設定は、サーバの管理者なら簡単にできることです。でも、それを相手のサーバの管理者に無断でやるのって無断リンクどころの騒ぎじゃなく問題ありますよね。
この文章は、そういう「誰もが『やっちゃいけないだろう』と思うような、あんまり議論の余地のない当たり前のこと」を書いてあるだけだと解釈した方が妥当だと思うのです。
Links and Law: Myths ではリンクするときに相手の許可は不要であるという主張が明記されているわけですし、それと真っ向から対立するようなことを、「最小限のガイドライン」で根拠を全く示さずに主張しているという解釈はちょっと無理があるように思います。
以上のような理由で、RFC1855 の例の一文を「無断リンク禁止」と解釈するのはあまりにも乱暴な話だと思います。