反avex陣営の「実質的な負け」は確定かも

というわけで、結局モナーに似たキャラが登録されていた「米酒」が取り下げられ、「のまネコ」という文字が登録されているところの「のまネコ」は残るという結果に。

これ以降avexがだんまりを決め込めば反avex陣営の「実質的な負け」で終わりそうです。

avex陣営としては「商標登録は撤回、のまネコグッズは全て販売差し止め」が「最低条件」でした。

(2005-10-05 追記)
頂いたコメントによると、グッズの一部(特にモナーに酷似していたキーホルダー)の販売中止が決定したようです(Ref. 発売中止11月Yujin 『のまネコ 米酒缶フィギュアキーホルダー』)。

一見、この条件は最低条件としては厳しすぎるように見えますが、例えば謝罪とかしても商標もグッズもそのままでは誰も納得しません。商標登録だけ撤回されたとしても、そもそも登録されていることが判る前に「のまネコグッズ」が発表されただけで勃発したのがこの騒ぎなわけですから、あんまり意味がありません。グッズ販売を中止しても商標が残ってれば「avexが他のAAグッズに対して商標侵害訴訟を起こす可能性を残す」という意味で文句がでるでしょう。

逆に商標登録を撤回してのまネコグッズの販売を中止しさえすれば、仮に他の問題が残ったとしても一発で沈静化する類の話でした。

のまネコ」としてグッズが発表された時点で、実はこの問題は「商標を取る/取らない」と「グッズを販売する/しない」の2つが主な問題点で他は付帯的なものに過ぎなかったわけです。

タカラの例が思い起こされるためか、反avex陣営はこの2つの問題点のうちでも特に商標を問題にしていました。

avex陣営にとっては、avexが権利を「行使する/しない」ではなく「行使できる/できない」が問題点です。

「他のAA作品に対して商標侵害が認められる可能性は極めて低いわけだし、avexもそんな訴訟はしないだろう」という主張はそれなりに妥当なのですが、既存の作品についてならまだしも今後作られるものが商標侵害になるかどうかは「訴訟になってみなければ分からない」というのが慎重な立場です。

この立場に立つ人々にとっては、avex側が商標を持ってるかどうかが問題なのであって、「これこれこういう根拠でavexがそんなことするわけないので云々」あるいは「これこれこういう根拠で訴訟になっても侵害は認められないはずなので云々」とかいう理屈で納得させることは不可能に近いわけです。

一方、avexにとって本当に重要なのはグッズ販売の方です。

冷静に考えれば、商標登録は飽くまでグッズに付随するもので、avexが既存のAAについて何かしらの権利を得てそこから利潤を得ようとすることは、まあ、考えにくいわけです。avexとしてはのまネコグッズが無事売れさえすれば良いわけですから、既存のAAに対して権利を行使する必要はありません。

しかも、のまネコブームなんて一過性のものですから、商標なんて使い捨てで全然構わないわけです。まあ、売れ方によってはアニメ化するとかも考えられますが、可能性はちょっと低すぎです。

つまり、モナーっぽいキャラの商標は、反avex陣営にとって重要である割には、avexにとっては利用価値の低いものだったわけで、今となってはむしろマイナス要因ですから撤回しないほうが馬鹿です。

問題はグッズです。

avexが自主的に取り下げるのでなければ、グッズ販売への対処としては差し止めの仮処分以外は考えにくいと思います。

仮処分というのは、裁判をしてもその結果が出る頃には原告の被害は拡大し意味がなくなってしまっている──という事態を回避するための制度です。

クロマティ高校の映画の件でクロマティ氏がやろうとしたのがこれで、調べたら仮処分についての専門家による解説がありました。

この解説にもあるとおり、仮処分を執行してもらうにはそれなりの保証金を用意する必要があります。強制力が強すぎるので、そう簡単にはできないようになってるんですね。そして後で正式な訴訟をするわけですが、のまネコの場合は、誰が原告になるのかも問題ですし、そもそも訴状の内容をどうするかという本質的な問題が絡んできます。

前の記事で書いたとおり、著作権者が判明しない限り著作権法ではどうにもなりませんし、反avex陣営が商標を取ってるわけでもないですから、グッズの販売については法的にはどうしようもありません。

そんなこんなで反avex陣営がもたもたしている間にavexはグッズを売り尽くしてそこそこの利益を上げるでしょう。早々のうちに仮処分申請をしなかった(できなかった)時点で、この点については反avex陣営の事実上の敗北は決定していたのです。