「抹茶とカルピス」は美味いのか

id:pusher の、福島県民さんからお便りを頂きました。

おけぐわさんならすでにご存じのことと思いますが、<抹茶とカルピス>(http://www.calpis.co.jp/kigyou/n/nr0407_48.html)なる商品が出ております。
私はかなり気に入ったのですが、残念なことに私の知るほとんどの人間は、この飲料のことを否定するのです。
最初のうちはがんばって「<抹茶とカルピス>はおいしい」と主張し続けていたのですが、こうも周りの反発が大きいと、だんだん自分の舌がおかしいのではないかとも思えてきました。

いやー、孤軍奮闘っぽさがひしひしと伝わってきますね。ちなみに引用文中のリンク先はカルピス乳業によるプレスリリースなんですが、社内向けプレゼン資料っぽさが強くてかなり面白いです。

ここで一つお願いがあります。<抹茶とカルピス>が旨いのか否か、おけぐわさんの意見をお教え願いたいのです。特殊飲料研究家として名高いおけぐわさんのお言葉ならば、私の周りの反対者も多少は論調を抑えるかもしれません。

「特殊飲料研究家」なる業種が存在するのかについてはともかく、ここまで言われると黙っていられません。

抹茶とカルピス

で、この「抹茶とカルピス」ですけども(驚いたことにATOK17の最新辞書で商標として登録されていました)。

もし販売元がサンガリアだったら間違いなく地雷ですが、一応カルピス乳業なので、手堅い作りが期待されます。

しかしながら「抹茶」でさらに「カロリーオフ」です。基本的に抹茶飲料は地雷が多い上に、さらに「カロリーオフ」が加わるとかなり危険です。前に取り上げたSORAの抹茶・ラテは、この2つの組み合わせにも関わらず比較的飲めましたが、それも「抹茶飲料としては」の話です。

そんな抹茶にカルピスを混ぜて果たしてどうなるものか。

2chのソフトドリンク板のスレ「新製品!抹茶とカルピス」を覗いてみると、最低の評価と言っていい状況です。数名が美味しいと言うのみ。しかもその数名は社員扱いです。

先日公開されたもずさんのフラッシュ「流石劇場 〜抹茶カルピス編〜」でも、流石兄弟の母者によってなにこれ。マッズッと一刀両断されています。

ただ、ほとんどの人が一口飲んで「ウゲゲ」となっていますが、これはこの手の飲料の飲み方としては間違っています。

例えば、ビールの味をまだ知らない子供は恐る恐る一口だけ飲んで「まずい」と判断を下します。これは子供の味覚の問題だけではなくて、飲み方の問題です。

「恐る恐る一口」──これが間違いの元です。そういう飲み方をして美味しく飲める飲料は限られています。こんな飲み方をしたらビールだってコーラだってそんなに美味しいものではありますまい。

余談ですが、悪名高いドクターペッパーもコアなファンは一気に飲む傾向があるようです。試してみると、あの薬品っぽさがかなり和らいで比較的適度な加減になって割と飲めます。ドクターペッパーそのものが美味しいかどうかの議論は脇に置いといても、少なくともちびちび飲むのは一番美味しくない飲み方と言えます。

ということを踏まえてトライしてみたわけですが。

まず、抹茶飲料にありがちの沈殿がありません。これはまあ、カルピスウォーターがそもそもカルピスの沈殿を押さえるための添加物の開発により生まれたという商品ですので、その添加物の副作用として当然と思われます。

で、飲んでみますと、意外にまともな味です。ただし、抹茶飲料としては。プレスリリースによると、ベースが緑茶でそれに抹茶を混ぜているとのことですから、普通に作られる抹茶飲料よりは飲みやすくなっているのも道理です。

それでいてきちんとした抹茶の風味があります。抹茶系が全般的にダメという人は多いので、そういう人にとっては基本的に飲めない代物です。その上「恐る恐る一口」だと、さらに抹茶の風味が際だってしまいます。

もっとも、抹茶は好きだけどそれに「甘酸っぱさ」を足すのはいかがなものか、という向きもあるかと思います。確かに、甘酸っぱさに緑茶の苦みは相容れなさそうに感じます。

ただ、「甘酸っぱさ+苦み」という組み合わせはそんなにゲテモノではないんですね。その証拠に、「よく考えると別物だけどコンセプトは似てるかなあ」と思われる定番カクテルがあります。カシスウーロンです。

これはカシスリキュールとウーロン茶を混ぜたものですが、配合比さえ間違えなければかなり美味しいカクテルです。──が、飲んだことない人からはゲテモノ扱いされることがあります。

まあ、カシスウーロンの完成度はかなり高いものなので、「抹茶とカルピス」がそれに及ぶべくもないのですが、「カシスウーロンみたいなもんだ」と思って、きちんと冷やして(あれば)氷を浮かべて飲むとそんなに不味いものでもないはずです。

そういうノリで抹茶とオレンジも全然OKだと私は思うわけです。むしろこっちのほうがカシスウーロンに近いコンセプトです。「日本ブレイク工業社歌」の萬Z氏も8/6の日記このドリンクを開発した企画者の熱い心意気だけは伝わって来ましたと書いています。ぶっちゃけ「熱い心意気」で言ったら萬Z氏に敵う人はなかなかいないと思われるだけに「重い」コメントです。

というわけで、今日のまとめ(「スタンダード反社会学講座」風に)。

  • ビールも「抹茶とカルピス」も、チビチビ飲むと美味しくありません。
  • カルピスウォーターが沈殿しないのは添加物が入っているからです。
  • カシスウーロンはお勧めのカクテルです。
  • 開発した商品の味が「熱い心意気」でどうにかなるものでもありません。