冥王星は「いらない子」なんかじゃなかった

もはや惑星じゃなくなってしまった冥王星。例によって萌えジャンルになったりして一部で盛り上がっていますが、それはともかくちょっと気になる記事が。

冥王星が惑星じゃなくなったのって「だって月より小さいしねー」ということだったと思ってたのですが、どうやらそういうわけではないらしいです。

上記の記事によると、国立天文台による惑星の定義についての訳がちょっと意訳気味で、それをさらにマスコミが曲解してしまった結果、原文にはありもしない軌道近くの天体の中で際立って大きいという条件が一人歩きしてしまったのであろう、ということのようです。

でも、ふたばの掲示板ではふたばの掲示板でも*1大きさが問題というようなことが書かれてたんですけどね。該当スレはとっくの昔に消滅してるんですが、ローカルに保存してたのから引用します。

ちなみに最初に漏れの立場を少し書いておく。
専門は数値計算で解析をすること。
実際にやってるのは高密度な天体の表面における‥(ここから先はアイデンティファイされるので勘弁)

〜中略〜

やはりサイズ(質量)が大事。
降着形成過程で研究者を悩ませる程度の大きさがいるという事になる。
それには大体火星ぐらいのサイズや質量が必要という事なのだな。

このスレでは他の天文学者達の意見も紹介されていて、おしなべて「冥王星は惑星とは言えない」ということでした。

ただ、上でも書かれてますがこのスレのスレ主さんは終始「形成過程」を問題にしてました。なので、単純に大きさというか質量が問題になるわけではないようです(よく分かりませんが)。

とはいえ(みんな指摘してますけど)特に松本零士の漫画で重要な位置づけにあった冥王星が惑星じゃなくなるというのは宇宙のロマン的には寂しい限りだなあ……と思ってたところ、日本惑星科学会の声明文によると「これは敗北を意味するのではない。否! はじまりなのだ!」ということのようです。

1992年になって、冥王星とは 別の海王星以遠の天体[TNOs(Trans-Neptunian Objects);和名は検討中] がはじ めて発見されました。その後1000個以上ものTNOsが発見され、その中には、2003UB313 のように冥王星クラスの大きさをもったものもどんどん発見されてきました。冥 王星ひとつを「例外」として片づけておくわけにはいかなくなってきたのです。

実は冥王星に準ずる天体はたくさんあって、冥王星はその代表的な天体だったらしいということが最近になって分かってきたみたいなんですね。

冥王星は新しいカテゴリーの太陽系天体のリ ーダーとなり、新しい世界の入口になるという新たな夢を切り開くことになった のです。もしかしたら、その中には、逆に小天体群のメンバーとはとても考えら えないほど大きい「惑星クラス」天体もあるかもしれません。冥王星を介して夢 はひろがっているのです。

──あー、もう。なんて言うかアレですね。「ここにいてもいいんだ!」「おめでとう!」「おめでとう!」「めでたいな!」「おめでとさん!」「クエッ」……って感じでちょっと感動しました。感動の仕方が間違ってますが。

何にせよ、松本零士氏の冥王星はこれからも太陽系の一族だ」と強調し、存在感が低下しないよう何らかの形で配慮してほしいという願いは叶えられそうです。

最後に蛇足気味ですが、最初に紹介した記事で気になった次の一文について。

やっぱり日本では天文学や宇宙開発に関してマスコミほど信用ならないものはない。 他の専門分野で同様でないことを祈るよ。

私の友人Mに言わせると、「やっぱり日本では情報科学やネットワークセキュリティに関してマスコミほど信用ならないものはない」なんですけど、彼はそれに続けて「自分の専門分野だからその間違いに気付くけど、他の分野についての記事の間違いには気付かない。でもきっと他の分野のも同じ程度に正しくないに違いない」と言ってます。

少なくとも天文学については彼の主張が当てはまることが証明されてしまった格好ですねえ。

*1:コメントを受け、読み直して表現を改めました。「ふたばの掲示板では」→「ふたばの掲示板でも」元の表現だと、確かに私がふたばの掲示板しか読んでないみたいな印象ですね。